最近の手口の変化を前のページに記載しましたが、
残念ながら依頼者の方から
これ以上面倒に巻き込まれたくない、
あるいは何となく
自分にも落ち度があったから、ということで
支払いに応じて終わるという事例も最近も数件ありました。
相談を受けている弁護士としては、依頼者の最終判断に従わざるを得ませんし、
また
法的理論を記載した支払い拒絶文書を出しても、実際に広告会社側が争ってきたら、次にどうしようか、手間もかかるし、と悩まれるのもわかるところです。
また、最近もいくつかの取材を受けて、
無料だと安心している一般人(中小零細企業の経営者)を後ろから高額請求でぶん殴るという、この事案の悪質性を説明するのに、私ももう少し適切な例がないか考えていました。
これは、
「ぼったくりバー」と同じではないでしょうか。
勧誘時の入口では、安い、1時間〇〇〇〇円だと言いながら、
1分でも時間を超えさせて、そこからは〇万円単位で請求。
理由は、最初にチラ見せしたメニュー表などに(小さく)書いてあるだろう、
というわけです。
確かに酒は提供して入るけど、これは後で高額請求するための撒き餌
に過ぎず、実際は安酒のみの提供でとても高額請求される価値はない。
だけども、その場で凄まれると後が怖いから、と支払いに応じ、
その後は面倒に巻き込まれたくないからと被害届を出すことも遠慮する。
でも、そんな連中の小手先の屁理屈に言いくるめられて納得できるでしょうか。
こんなぼったくりバーの被害に遭って、メニュー表に確かに記載あるのを見落とした方が悪かった、といって払うべきなのか、あるいは払うのも仕方ないと払ってしまった後の相談ならともかく、(仮に支払い前に相談されたら)諦めて今から支払いなさい、とアドバイスする
弁護士はいないと思います。
求人広告詐欺は、これと構造上はほぼ変わらないと思います。まだ支払いに応じていないなら、まだマシな場面だとも考えられます。
こうした手法は、いずれも影の世界では存在できていても、
ひの当たる世界(司法手続きの世界)で堂々と権利主張できる類いの
商法では決してありません。それは彼ら自身がよくわかっていることだと思います。
そんな彼らの、契約書に書いてある、契約時に読んで内容を知ってたはずだ、
というありきたりの反論に、弁護士がその先を心配する必要も少ないように思います。
もちろん、最終的には依頼者(中小企業)の意向で決定せざるを得ませんが、
契約書に記載があるから、とかHPに注意事項として上げられているから、
という表面的なことだけには惑わされず(あるいは罪悪感を持つ必要なく)、
中小企業側は毅然とした態度でやはり支払いを拒否してほしいと私は思います。
より正確に書くと、確かに広告業者側でも、真っ当な方向で営業しようとしているところも
見られるようで、中には自動更新について十分な説明を行って申込者の了解を
取付けているところも出てきているようです。
ただ、そうしたところは、もともと被害として上がってきませんし、
どれぐらい数があるのか私の方でも十分把握しにくいのが現状です。
しかし、被害に遭ったと上がってくるのは、そうした説明が全くない、または不十分で
誤解を招く方向に説明(誘導)しているもので、まだそうした業者が多数存在しており、
注意をする必要性は変わっていません。
消費者事件に詳しい方であればご存じの通り、昨年特商法が改正になり、
定期契約については、申込時にそれが消費者に確認できるような仕組みの構築、
広告に規定の表示に誤解させるような記載をすることの禁止がもりこまれ、
違反すると直罰や契約自体の無効取消まで盛り込まれました。
(詐欺的な定期購入契約商法の対策 https://netshop.impress.co.jp/node/8515)
これは残念ながら、消費者保護の法律のために中小企業は含まれませんが、
自動更新条項の存在を十分説明しない、あるいは誤解させる方向に誘導するような商法が
とてもまっとうではないことは、中小企業を相手とした契約でも同様です。