では、こうした商法について裁判上「詐欺」等として争う方法は本当にないのでしょうか。
つまり問題は、証明できるかどうか、です。これにはちゃんと方法があります。それは、裁判手続の中で、「勧誘時に自動更新や、有料になるときの金額の説明を全く受けていない」という被害者の声をきちんと集めることです。これは単に、ネット上の書き込みをただ集めるだけでは、出所不明な書き込みだから、証拠として不十分、信用性が欠けるとして法的には評価されません。しかし、被害者それぞれに弁護士がついて証言する、あるいは裁判所の調査嘱託手続で調査することにより、常態的に不十分な説明の勧誘をしている、どうやらその数から言って「意図的に」こうした勧誘をやっている、と立証することは裁判手続の中では可能だとおもっています。
ですから、私は問題が発覚した2月の段階で、広告業者側に最初に出す内容証明郵便には、「もしこちらの依頼者を訴えるなら、裁判手続でそちらの広告サイトに掲載されている各社に対して勧誘時の状況の調査を行って、徹底的に争います」「貴社が督促状などで記載しているような、形式的に契約書だけを見てその請求が認められるような、簡単な裁判では決して終わりません」と明言してました。にもかかわらず、訴えてきた広告会社があったので、明言してきたとおり、その会社相手の被害相談を受けている弁護士により弁護団を結成して、被害証言が取れる形を確保し、さらに広告に載っている会社30社ほどをピックアップして反論の答弁書とともに調査嘱託を申し立てました。その結果相手が何の反論もせずに訴えを一方的に放棄したことは先に記載したとおりです。
結局、悪質な無料求人広告会社側に取ってみれば、被害者側が団結することが一番困るわけです。そうさせないために、HPにこうした連絡をする人は営業妨害だ、信用毀損罪などで訴える、などという脅し文言を記載するところが増えているわけです。広告会社側としては、広告なので求人先を記載することを避けられない(そこを省略して、一旦問い合わせ連絡を求人先に広告会社側が取り次ぐ、というシステムを取ると仲介業となって職業安定法違反の問題になると思われます)なので、これを隠すことができない、したがって求人先を誰もが把握することができる、という矛盾した関係にあります。ここは彼らの弱点でもあります。
ただ、先に述べたように、裁判手続上の立証手続も取っていない状態で、特定の広告業者側の行為を捉えて「詐欺」と断定したような連絡を広く行うことは、法的にはやはり危険な面がありますし、弁護士としてもとてもお薦めできません。ただ、以前より見知った取引相手の会社などが同じ被害に遭っていないか、心配してこれ以上被害に遭うところをなくしたいという気持ちはとてもよくわかります。
これはあくまで私見ですが、こうした会社に対して、「特定の広告会社」を「詐欺」などと断言する表現は注意深く避けた上で、単に「無料期間終了前に解約申入をしなければ自動で有料となることはわかっていますか」「貴社も無料で終わらせるつもりなら、くれぐれも期限内の解約手続きを忘れないように注意して下さい」という忠告をするだけであれば、刑事問題になることは無いのではないか、と思っています。これは単に、自動更新条項の内容を見落としていないか告げること(契約書の文言をそのまま読み上げるだけ等)でしかなく、この内容自体は彼らが「勧誘時に口頭でも説明している」とか「契約書に書いてある」と主張していることを、ただ繰り返して告げるだけでしかありません。そのため、こうした特定の広告業者の信用を貶める内容ではないし、営業妨害にも当たらないはずなので、こうした刑事罰を問われるような理由はないはずだ、というのが私の考えです。
ただし、これはあくまで私の私見でしかありませんから、大変申し訳ないのですが現段階で私も、警察が同じ解釈で対応するかどうかまで断言をすることはできません。正攻法は地元新聞、TV局、週刊誌などマスコミを通じての周知活動だと思います。一部の見知った会社に対して例外的に忠告する場合には、最低限上記の点には注意してあくまで自己責任で行うようにお願いします。