(全国版)弁護士が語る「無料求人広告の悪質な手法」その5

弁護士 高良祐之

2019年09月03日 20:57

5 また、更なる工夫がなされているのが、解約申入の期間制限条項である。これは(自動更新の)「〇日前」(1週間前後)までに、解約申入を行わないと次の更新がなされる、というものである。
これは、実際の自動更新により費用が発生することに途中で気がついた中小企業側が、無料期間経過前に解約を申し入れても、解約申入期間の制限は申入書の引用する契約条項書面などに書かれていて更に気付きにくい形式であるため、解約申入期間は過ぎていることが多く、①(1日でも)「解約申入期間が過ぎているので解約できずに更新される(た)」、として請求を正当化するのに利用する場合もある。
しかし、それ以外にも②解約申入期間経過~実際の更新期日前(無料契約期間終了前)の間に更新前提での高額請求を送りつけ、抵抗する中小企業側には、「更新前なので満額の請求はしないので、かわりに半額~1/3程度の支払いはしてほしい」「和解を拒否したままで更新日を過ぎたら、全額請求する」として和解を持ちかけることを狙って利用されている。すなわち、早めの請求書を送って、到着後3,4日後には実際の更新日が来る形に設定しておき、揉める相手には更新日が来る前に和解に応じなければ全額請求するぞ、それよりは(契約した金額より)安くなるのだから和解した方がお得である、弁護士に相談したりして東京(契約上の合意管轄場所)で裁判を起こされたら、地方の中小企業では弁護費用だけでこの和解金よりも高くかかるぞ、という形で被害者心理を突いた交渉を展開するのに使われている。
実際、当職が確認をした沖縄県内でも、不承不承ながら和解金(それでも数十万円レベル)の支払いに応じた会社は複数確認されている。全国でどれほどの会社がやむを得ず支払ったのかは、推して知るべき問題である。